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No.4-1
上田假奈代 / Profile AB型 URL:www.kanayo-net.com
1969年奈良県吉野生まれ。闘う天才料理詩人・救わない巫女。
大阪市立文化事業実行委員会発行「カルチャーポケットC/P」に「生きる詩人になる方法」連載中。
3歳から詩人。2000年からトイレ連込朗読プロジェクトを実施。
知る人ぞ知る上田假奈代が語りかける。

井戸掘りといふお仕事

再会はあまりに突然......
浅黒く焼けて、ひとまわり大きくなったように見える......

笑わない肖像写真......
アフガンでそれが気軽に言えるようになる日はいつやって来るのだろう......

いっそう激しく降る雨
彼女は、雨の向こうのカフェを振り返り、そう言った......

涸れる井戸を掘る仕事......
2000年夏、彼は300万円を渡されて「井戸を掘ってこい」と言われる......

井戸を掘りボクシングする男......
たった1人からはじめて、今では600人を背負っている......

アップリケと鬼
けれど今、彼がいる現場は、手抜き作業をすれば命にかかわるような場所なのだ......

アフガンにいる理由
宗教戦争からはじまったアフガンを見てダイレクトに人の、生きたり死んだりを感じた......

天狗なら、またあえるはず
じゃあ、わたしが杉の木にいた天狗だったことも時効よね......
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イベント・アイ特集連載コラム
Monochrome Column
上田假奈代なモノクローム


編集:池田 剛
文章:上田假奈代
意匠:ビット田村
仕掛:ドクタ丸尾



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井戸掘りといふお仕事
井戸掘りといふお仕事
上田假奈代

再会はあまりに突然、春のカフェ

ちいさな粒の雨が、金曜日の窓を濡らしていた。
夕暮れが近づく頃、ケータイが鳴って、女友達と打ち合せの場所をきめる。
かぼちゃぜんざいが食べたいなと思って、近くのベトナム料理屋を指定するが、
もしかしたら休みかも、と思いなおし、その先の長堀通りに近いカフェで会うことにする。

約束の時間にすこし遅れて到着すると、赤いセーターにハンチング帽が映える彼女をすぐにみつけ、
オレンジ色の傘を畳ながら席についた。
そして顔をあげた時、何気なく斜め前に座っている男に目をとめ、声にならない声をあげた。

「蓮岡」と、同時にわたしの顔をみた彼が「かなよさん」と目を丸くする。
つぎの瞬間には抱き合った。
「元気なのね。なんで、ここに、いるわけ。」

目の前にいるわたしの名を呼んだ男は、3年程前アフガニスタンに行ってしまった蓮岡修。
浅黒く焼けて、ひとまわり大きくなったように見える。
アフガンの診療所で働いているとか、井戸掘りをしていると聞いていた。

蓮岡に会ったのは、今から10年程前。
わたしが京都の祇園近くの長屋に住んでいた頃、友達のタカちゃんが
友達を紹介したいと言って、大学生だった彼を連れて遊びに来た。
ご飯を食べながら、写真の話や世間話をした。
うちの飼い猫と一生懸命遊んでいる。
先にタカちゃんから、彼がアフガンの戦場まで行って写真を撮っていると聞いていたが、
そこにいるのは男の子らしい男の子の姿だった。
何が彼をアフガンに向かわせているのか、その時は聞かなかった。
後日わたしは「久しぶりに、身のたけな男の子に会えてうれしかった」とタカちゃんに伝えた。

二度目に会った時、アフガンを撮ったポートフォリオを見せてもらった。
そこに写っているのは、凄惨な戦場ではなく、老人や子どもたちの優しい顔。

カメラを向けられたアフガンの人たちは、この旅人を最上の笑顔で迎えたくなったのだろうな、と思った。

それから、よくイベントなどで彼には記録や裏方を手伝ってもらった。
自然体で自分の好奇心を上手に扱う姿に、その場を共有する安心感があり、
わたしは何かしら声をかけて、彼に用事を言いつけていた。
北海道に一週間ワークショップに出かけた時も一緒だった。
海辺の村の人たちと瞬く間にうちとけて、寺はあるけれど坊主がいないその村に、蓮岡を置いて行くようにと頼まれたほど。
現場での彼は、ずば抜けてカンがよいわけでも、段取りがよいわけではないけれど、どの現場でもみんなから好かれた。

彼が、難関の0.3%を突破して広告代理店に就職が決まった時も、それを辞めて庭師の仕事をしている時も、何故か彼が別の場所を求めているのだろうと感じていた。イベントの手伝いを頼む時も、今日本にいるのなら手伝ってもらおう、そんな頼み方をしていた。
だから、彼から本腰でアフガンに行くと聞いた時も、驚くよりも、その時が来たんだな、と思った。


※ アフガニスタンの写真はペシャワール会よりご提供いただきました。

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